
キラキラ
第26章 10カゾエテ ~Count 10~
俺は、学園についてから、いの一番に隣のクラスをのぞき、相葉と二宮を廊下の隅に連れ出した。
あの翔の手首は、昨日の夕方まで絶対に綺麗だったはずだ。
だとしたら、俺が寝てしまってからの時間帯に、何かがあったということになる。
一緒に行動していたはずの彼らに聞いたら分かると、思っていたが、聞かされた事実に、俺は驚かされるはめになった。
「マジで……?」
「うん。ごめん。たくさん人いたし、大丈夫っていうから」
ただならぬ俺の気配に、まずいと思ったのか、相葉は、目の前で手を合わせて、ごめんなさいのポーズをした。
「……単独行動とるなってあれほど言ったのに」
ぼそっとため息混じりに呟いた俺に、相葉は慌ててフォローする。
「え。でも、風呂には入ってないけど、帰り道一緒だったよ。別におかしなとこなんか……」
「帰り道が一緒って時点でおかしいじゃねーか。あいつは、そんな長風呂はしねぇよ」
イライラと言葉尻をひったくったら、黙っていた二宮が、思い出すような目をしながら、言う。
「……そういや。風呂からの帰り道。ちょっと変っちゃ変だった」
「どんな風に」
「なんか……無理矢理笑ってるって顔してた」
「うそ。マジ?」
焦った相葉が、真剣な顔になった。
「うん……目も赤かったから、俺、最初、この人泣いてんのかと思ったもん」
言われて、ハッとした。
うつらうつらしていたから、あまり自信はないが、夢のなかで、泣いてる翔が俺を見ていた気がする。
……もしもそれが現実だとしたら。
「ごめん、潤……どうしよ」
怖い顔をしているであろう俺の前で、小さくなる相葉。
……こいつらにあたってもしょうがないよな。
俺は、はぁ、とため息をついた。
「どうしようって……キャプテン命令は絶対だし、しょうがねえよ。……おまえらも気をつけろよ?」
申し訳ない、と小さくなる二人の肩をたたき、俺は、自分の教室に戻った。
机について、ぼんやりと外を見てる翔が目に入る。
左の手首をかくすように右手を添え、心ここにあらず、といった感じだ。
……何があった?
問い詰めたら答えてくれるだろうか。
俺は……どうして翔のことになるとこんなに気になって、腹が立つのだろう。
……自分でも分からなかった。
