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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


本日、二度目のきゅんは、学校に行くために着替えてるときだった。

カッターのボタンをあけたまま、


「あ、そーだ……シャーベンの芯切れてたんだ」


と、翔が机の引き出しをゴソゴソ探しはじめた。

別に同室だし、風呂にも一緒に入ってる仲だし、裸がどうとか、着替えがどうとかは、特に気にならないはずだった。

だけど、着替えてる途中、というのがミソで。


いや、ミソってなに。って話だけど。


カッターを羽織っただけの、その翔のその首筋やら、鎖骨やらが、妙にやらしく見えてしまい、そんな自分にびびってしまう。


野郎の着替えの途中をみて、焦るってありえない!

俺は、慌てて、


「あれー?ストックなかったっけー?」


とか、言っちゃってる翔に、


「俺の少しやるから、早く着替えちまえよ」


と、せかした。


すると、かがんで机の中を探してた翔は、俺を見上げて、にこりとしたのだ。


「マジ?ありがと。買ったら返す」


………きゅん。


出た。きゅん。


俺は、柄にもなくドキドキしながら、「おお」とか、適当に呟いて、鏡を見ながらネクタイを結んだ。
なんで、翔に、きゅんとしちまうのか分からなかった。

前にも一回こういうことがあったけど…。


おかしいな。
俺は、ノーマルのはずだけど……。


邪念を振り払うように、首をふっていたら、俺の隣にトコトコやってきて、翔が同じようにネクタイを結びだした。

不器用な俺と違い、翔は、細い指でするすると魔法のようにネクタイを結ぶ。
中等部の頃からしてるからだよって、本人は笑うけど、俺にしたら、すげーなって……。


「……」


突然、真顔になった俺に、翔は怪訝な顔をした。


「……なに?」

「……これ。どうした?」


俺は、翔の手首にそっと触れた。

赤黒くうっすらと変色してる。
色白な彼の肌に、不似合いな色。
そして、これはついこのあいだ、ようやく消えたアザのあとに酷似する。
そのアザがついた理由は確か。


「…どうした?」


顔を強ばらせた翔に、再度尋ねた。

翔は、さっと腕をひっこめ、笑った。


「なんでもない。ぶつけた」

「どこに」

「えっと……忘れた。なんかいつのまにかついてた。何だろう……?」



嘘だ。


誰よりもまっすぐで、嘘を吐くのが苦手な男の言葉なんか、すぐ見破れる。

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