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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


Jun



我ながら自分の体力と回復力に、感心する。

朝目が覚めたら、すっかり体は軽くなっており、火照りも嘘のように消えていた。

ふうっとため息をついて、両手で顔を覆うと、ぬるいタオルが額におかれているのに気づき、それをとり、のびをする。


翔だな。
……ったく。母親みたいなことをしてくれる。


なんだか照れくさいけど、礼を言おうと体をそっとおこしたら、向かいのベッドに寝ているはずの翔がいない。

あれ、と思った時、ありえないところから、くうくうと寝息がきこえた。


……マジか


視線を落とせば、床に転がる翔。
いくらカーペットがひいてあるとはいえ、一晩寝ると体も痛くなりはしないか。


小さく丸まって眠るその姿は、無垢な子供そのもの。
しっかりとハーフパンツのなかに入れられたTシャツのすそが笑いを誘う。


……だから、だせーっての。


深い眠りに入ってるのか、彼はピクリとも動かない。
すこし口を開けて眠る姿が、可愛らしくて、このままみていたい気もするが。
時間を確認したら、そうのんびりもできない時間であることに気づき、あきらめて手を伸ばし、翔の細い肩に触れた。


「……翔?……翔」


揺さぶりながら、小さく声をかけたら、ふるっと睫毛がふるえ、その黒い瞳がゆっくり開いた。


「……ぁ……潤……?」


寝起きの顔に、ドキリとした。
かすれた声にも、ドキリとした。

なんの、ドキリかよく分からないけど、そのドキリを分析するまえに、俺は早口でつっこんだ。


「おまえ、こんなとこで寝てんなよ。風邪ひくぞ」


「……具合は?」


「大丈夫」


「よかった……」


ニコリとする翔を前に、胸がきゅんとした。


………きゅん。

なんのきゅん?


翔がゆっくり起き上がるのを、ぼんやり見ながら、自分につっこむ。

いてて…体が痛い、と苦笑する翔に、ばかだな、とも、ありがとう、とも言えず。

俺は、自分の胸元をぎゅっとつかんだ。

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