
キラキラ
第26章 10カゾエテ ~Count 10~
どうにかこうにか震えもおさまり、立ちあがることができたから、逃げるようにその場を離れた。
そんなわけはないけれど、また、あいつが戻ってくるかも、と思うと気が気じゃなく。
一年生の部屋ばかりの棟に入ると、心底安堵して深いため息をついた。
いつもの風景と、さっきの事件とのギャップがありすぎて、ぼーっとする。
それでもなんとかふらふらと歩いていたら、前方に仲良く歩いてる、風呂上がりの相葉くんと二宮くんが見えた。
「……」
一瞬見られたくない、と思ってしまったが、なぜか振り返った相葉くんに、一足早く見つかってしまった。
「あれ。翔ちゃん。いまあがったのー?」
立ち止まり満面の笑みをみせる相葉くん。
俺は、うまく笑い返せてるかな……。
「うん、今」
「あれ?全然気がつかなかった。長風呂だったね」
相葉くんがニコニコして、追いついた俺と歩調をあわせてあるきだした。
だけど、なにかあったのかを見抜かれるのが怖くて、目が合わせられない。
うつむいて、視線をさまよわせていたら、俺より背の低い二宮くんの見上げる視線とバッチリあってしまった。
二宮くんは、険しい顔で俺を見つめていた。
……なんか感づかれたのかな。
でも、俺は知らんぷりをした。
つっこまれるのが嫌だった。
相葉くんが、週末の試合について語るのをうんうんと相槌をうちながら聞いていた。
頭には全く入らなかったけど、興味深そうに笑ってみせた。
おやすみ、と二人に手をふり、そそくさと部屋に滑り込むように入る。
後ろ手に扉を閉め、部屋の中に目をやれば、ベッドで、寝ている潤が目に入った。
そっと近寄れば、いつもより呼吸がはやい。
顔も赤くて、しんどそうだ。
「……」
ベッド脇に座り、潤の顔をじっと見つめてると、何故だか再び涙がでてきた。
そんな俺の気配を感じたのか、潤がうっすら目をあけたから、俺は慌てて涙をぬぐった。
「……どうした?……」
「……なんでもない」
「泣いてる……」
「なわけないじゃん。潤が、心配なだけ」
潤は、大袈裟だな……と、クスリと笑った。
「明日には治る……」
「うん。おやすみ」
「ああ……」
そのまま、またうつらうつらと、意識を沈めていく潤。
俺はその夜、潤の枕元から離れずに、朝を迎えた。
