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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~



その日は、潤が、朝から熱っぽくて寝込んでいた。


それなのに、一人で風呂に行こうとする俺が心配だから、と、無理矢理ついてこようとするもんだから、「あんたはバカか」と、こっちも力ずくでベッドに追い返す一幕が。


「なに考えてんだ……」


と、しんどそうな顔で責められても、こっちだって、


「なに考えてんの?」
 

と、言い返すしかないよね。


じろりと睨んでくるけれど、スルーしてやる。

当然だろ。
風邪ひいてるくせに、俺の心配までしなくていいんだよ。

確かに、単独行動はやめよう、って話はしたけれど、別に今から夜道を一人で歩きに行こうとしてるわけじゃない。
誰もいない教室に行くわけでもない。


たかだか風呂だよ?


「大丈夫だってば(笑)」


それなのに、なんだかぐずぐず、ずーっとケチをつけてくる潤。
心配してくれるのは嬉しいけどさ。
自分を犠牲にしてまで、動いてくれなくていーよ?


「相葉くんたちと行くから」


潤の目の前で、相葉くんに連絡をとり、なんとか納得させた。


「……気をつけろよ?……」


渋々受け入れた潤は、……しんどそうに目を閉じた。


「もう寝なよ」


声をかけたら、僅かに頷いた潤は、……やがて、すうすうと、寝息をたてはじめる。

限界だったのだろう。

少し赤い頬にそっと触れたら、燃えるように熱くて。

朝からあまり変わらない体調が気になる。

風呂の帰りに、長瀬さんとこに寄って、氷枕でも借りてこようと思った。

俺は風呂の支度をして、隣の部屋に向かった。




今から思えば、潤の言うことを聞いとけば良かった、と後悔している。
風呂くらい一日入らなくたって死にゃしないんだから。

でも、その時の俺は、あの日以来、センパイに出会うこともなく、全くの通常運転状態で過ごしていたから、大丈夫だ、と思いこんでいた。

なんなら、もう、ちょっかいなんてかけてこないだろう、とのんきに思っていた。




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