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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~



二宮って生徒にはすぐにコンタクトがとれた。

隣のクラスである相葉くんに、ひとまず聞いてみたら、


「ニノなら部活一緒ー」


と、元気な返事がかえってきたからだ。
同じ野球部に所属してるとかで、すぐに本人にたどり着くことができて、とりあえず安心する。

その二宮くんと話をすべく、俺らは寮の食堂でおちあった。


「……俺が?」


綺麗な茶色い瞳を怪訝な色に染め、二宮くんは咀嚼してたサラダをごっくんと飲み込んだ。

高校から学園に入ってきた、という二宮くんは、白い肌をしていた。
野球部のくせして焼けてないのは、日焼けしない体質だからという。

小柄で華奢な体型からは、想像もつかない球をなげるらしい。

相葉くんは、持ち上がり組だからよく知ってる。
その笑顔と、ルックスのよさで中学の頃から有名人だった。


「豊作かぁ……」


ぼんやり呟くと、隣から、笑いながら潤がこづいてきた。


「……ん?」

「呆けてないで説明してくれよ。俺にした話をもう一度。こいつらに」 


……そうだった。


俺は、数日前の出来事を話して聞かせた。

たちの悪いセンパイらが、俺らの名前を把握してるあたりの説明をすると、相葉くんも二宮くんも、一様に嫌な顔をした。


「マジで……?」

「え。これ貞操の危機?」


悪いけど笑い飛ばせない。

俺と潤の硬い顔に、相葉くんと二宮くんは顔を見合わせた。


「これ連れて行かれかけた跡」

アザになった手首を見せたら、今度こそ相葉くんたちは、げーって顔をした。


「マジかよ……」

「必要以上に警戒することはないけど、なんとなく頭においといて」

俺が真剣な顔をしたら、二宮くんは、あーあ、という顔をした。

「……なんで、普通に生活してるだけなのに、そんな心配までしないといけないんだか……」

「長瀬さんにも報告済みだし、寮長にも伝えてる。学園側でも早急に対処するっていってる。とにかく俺らは、学園でも、寮でも、3年がいる棟には、なるべく一人で行かないように気を付けよう」

潤が、みんなの顔を見渡して確認した。

俺らは、どうして俺が……という思いをそれぞれに抱えたまま、うなずいた。
一人で行動することはなるべく避けようと、俺もその時思った。



……だけど。


ちょっとした油断が、あの事態を招いたんだ。


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