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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


その後、大野とその上級生たちが、どこでどんな喧嘩をしたか、どんな結果だったかということは、分からない。

ただ、昨晩、同室の相葉くんにラインで確認したら、夜遅かったとはいえ、ちゃんと帰ってきたということ。
時々足を引きずる素振りをみせていたものの、見た感じは怪我もなさそうだということであった。


「喧嘩は勝ったんじゃねーの。二対一で、たいしたもんだなあいつ」


潤が、机に肩肘をついたまま、こちらを向いてふんと鼻をならして笑った。
俺は、ベッドに腰かけて肩をすくめる。


「たいしたもんだって………そーゆー問題じゃないよ」

「だって、俺らには関係ねーだろ。つか、おまえしばらく一人になるなよ?」

「なんで?」

「言ったろ。3年に、「豊作だ」って言われた意味考えろ。………俺も気をつけるけど」

「………うん」  

「あと、相葉と、何組か知らないけど、二宮?だっけ?教えといてやらねーとな」

「………うん」


豊作の意味。
連れていかれそうになった事実。
ここは男子校だ、ということ。


潤にこんこんと説明されて、眩暈がしそうになった。


男同士でも、性暴力はありえる話。
男子校ならば、男が恋愛対象になるのも珍しくない話………。


説明してくれる潤を、思わず穴があくほど見つめてしまう。


男同士でもありえるって?


………ならば、このモヤモヤした気持ちにも説明がつきそうなんだけど。 


触れられたらドキドキする。
ジュースの交換ごときで胸が苦しくなるくらい、緊張する。

………一緒に過ごせたら嬉しい。
女の子より、………潤とすごしたい。


これってさ………。



「……………」


「どうした?」


黙って、潤を見上げたまま固まっている俺に、潤が怪訝な顔をした。


………俺………


「翔?」


俺、多分好きなんだ。
  

「おーい。大丈夫か。ショックうけてんのか」


ひらひらと俺の前で手をふってみせてくれるその眼差しは優しくて。
思わずその手をとりたくなる。


「そんな不安な顔すんな。俺のそばにいろよ?」

「………うん」


潤。
俺、気がついたわ。


「ありがと」


俺、お前に恋したかも。







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