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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


大野と二人で歩くなんて初めてだ。

脱走してやしないか、と、ちらりと後ろを振り返るとめんどくさそうにしながらも一応ついてくる。

俺は、なんだか少し緊張しながら生物準備室のある校舎に向かった。


「………」


黙ってもくもくと歩いていたが、黙り続けるのもなんだか苦しくなってきて、俺は、明るい声をあげた。

「大野はさー。実は勉強得意なんだろ?なんの教科が好き?」

「………」

「………俺はね、数学が好きでさ。難しい数式解けたときのあの快感っていーよね」

「………」

「あー、でも、化学はやだなぁ。記号とか覚えるの大変じゃん」


「………」


「………じゃあさ、美術とかは?好き?」


「………よくしゃべるやつだな」


ぼそりと、大野が口を開いた。

ようやく声が聞けた、とおもったら。


「………うるせーから、黙ってろ」



撃沈。



バッサリ拒否られる。
コミュニケーションもへったくれもないのはこのことか。


はいはい、と俺は肩をすくめて、また口を閉じた。 


そんな甘くないかー………。


いきなりいろいろしゃべってくれるなんて思ってないけど。
せっかく二人で歩いてるんだから、もう少し心を開いてくれてもいいもんなのにな。


残念に思いながら渡り廊下を歩いていると、向かいから歩いてきた学生二人が通せんぼをするように、すっと立ちはだかった。


「………?」


横をすり抜けようとしたら、明らかに足で邪魔してくる。
困惑して顔をあげる。
校章の色をみたら、3年だ。


「あの。通してください」

「や。それはちょっとできねーな」

「………え?」

「大野。顔かせよ」


振り返ると、大野は、相変わらずめんどくさそうにたたずんでた。
ハの字の眉をしかめ、仏頂面をしている。


「こないだの礼だよ。おら」

 
言って、のびてきた手が、大野の腕を、つかみかけたが、大野は素早く身をかわした。


お礼って………また喧嘩?!


「………ふざけんな、こら」


低い声で凄む上級生に、俺ははらはらして行方を見守る。


「………は?誰が行くかよ。馬鹿じゃねーの」


言われて舌打ちした上級生は、次に俺の腕を、引っ張った。


「?!」

「これお前のオトモダチ?」


引っ張られ、そのまま引き寄せられる。
俺はビックリして体を離そうとした。

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