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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~



………それからも。

潤に触れられたら、ドキドキするのは相変わらずだったが。
それ以上に一緒にすごせる喜びを大事にしたい、と、俺は、努めていつも通りを心がけ、毎日を過ごしていた。

幸いにも潤にも変化はなく。
俺が嫌われた様子はなかったから、安心していた。

………大丈夫。


*****


チャイムがなり、授業が終わる。

ざわざわとしだした教室のなか、

「このクラス、今日の日番だれー?」

教卓から、生物の教師である香取先生が、のんきな声を張り上げた。

俺は、手を上げて、席をたつ。


「はい。僕です」

「櫻井か………おまえだけで持てるかなぁ。準備室にあるテキストを教室に運んで配って欲しいんだけど」


俺の体格を眺めて、香取先生は苦笑いした。


じゃあ、潤に手伝ってもらおうかな、と思って、彼を探そうとしたら、ちょっとクラスを見渡してた香取先生が、一番前の窓際の席で突っ伏してるやつに、歩みより、その金髪の頭を軽くはたいた。

言わずもがな。
その金髪は大野。


「ぅおい。おまえ、俺の授業の最初から最後まで寝るなんていい度胸だったな。ちょい手伝え」


固唾を飲んで見守っていたら、頭をはたかれた大野は、眠そうな顔をあげ、それはそれはめんどくさそうな表情になった。


「………なに」

「おまえ、教師にむかって、なに、じゃねーよ。
櫻井と準備室に行けや。とりあえず寝てたことは見逃してやるから」 

「……めんどくせーな………やだ」

「すげー口の聞き方するんだな、おまえ。ほら立て」

香取先生に椅子をけられ、大野は渋々立ち上がった。

こちらを心配そうにみている潤と目が合う。

俺は、大丈夫というようにニコリと頷き、「行くよ」と、声をかけ、大野と教室を出た。

テキストを運ぶだけだ。
たいした仕事じゃない。

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