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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


Sho



おやすみ、と、潤に声をかけられたのに、うん、としか言えなかった自分に嫌気がさす。

俺は、肌布団にくるまり、潤に背を向け小さくなった。

遠くでため息をついた気配がして。


「………っ」


心臓をつかまれた気分になる。

こんな態度をとって、もし潤に嫌われたらどうしよう。

今更ながらに、自分の子供のような態度を省みて、怖くなった。
だけど、それ以上に、俺は、自分のよくわからない感情に戸惑っていた。


てっきり断ってくれると思ってたのに、カラオケ行きを快諾した潤に驚いた。

嫌だ、と言えない雰囲気に、渋々ついていったけど、女の子たちのキャピキャピしたノリがどうしても受け入れられない。

歌う気分にもなれなくて、不機嫌な顔をしないようにするので精一杯で。

潤の歌声を聴くことができたのだけが、収穫だった。
少し鼻にかかった甘い声で、俺でも分かるアーティストのバラードを歌ってくれた。
きゃーきゃー言う外野はうるさかったけど、俺は、なんだかそのときだけ幸せな気分になった。

女の子と別れたあと、寮に帰る道すがら。

潤は、しきりに「楽しかったな」と、言ってたけど、俺は、ちっともそう思わなくて。

買い物から昼飯までが、楽しかったぶん、一日の最後が最悪すぎたから、とても「そうだね」とは言えなかった。

潤が何か言いたそうにしてたけど、口を開いたら、つまらないことを口走ってしまいそうな自分がいて………。

悪いな、と思いながら、だんまりを決め込んだのだ。



はあ………と、細くため息をついた。

「………」

潤の寝息が聞こえる。
俺は、そっと起き上がり、反対側のベッドに目をこらした。

こちらに、横向きになって眠っている潤。

静かにベッドをおり、足音をしのばせて、潤の傍らに座り込んだ。

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