
キラキラ
第26章 10カゾエテ ~Count 10~
Jun
………なんとなく。翔が変だ。
怒っている気がするけど、なんでだろう。
「………おやすみ」
消灯後、暗闇のなか、静かに反対側のベッドに声をかけたら、
「………うん」
と、小さい返事だけ返ってきた。
俺は、ベッドに寝転んだまま、がしがしと頭をかいて、首をかしげた。
………なんで?
俺、なんかまずいことしたか?
今日の動きを頭にうかべる。
ファーストフードまでは、いつも通りの翔だった。
………と、すると、やっぱりあのカラオケかなぁ………。
俺は、小さくため息をついた。
結局、二時間だけという約束で、その女子高生の誘いにのり、カラオケに行った俺たちだ。
はっきりいって、俺は、女の子との恋愛なんかしばらくするつもりもなかったから、できれば断りたかった。
だが、翔にそれを強要するのもためらわれた。
中等部から寮生活の彼には、小学生以来の女子だろう。
男だらけの生活に慣れきってるあいつは、少しくらい外の世界も知らなければいけないのかもしれない。
俺の勝手な事情で、あいつの経験値摘み取っちゃダメだよな………。
誘いをうけたときの翔の顔は、どうしたらいい?と俺に聞いているようにみえて、………だったら翔のために、と、オッケーしたのに。
翔は、カラオケに行っても、曲を知らないから、の一点張りで一切歌わず。
愛想笑いを浮かべてひたすらウーロン茶を飲んでいた。
女子高生の相手は、ひたすら俺。
それだって、俺も途中から面倒になり、スマホばかりいじる始末で。
あの子達も、最後には、俺らに次はない、と悟ったのか、連絡先も交換せずに、さっさと帰っていった。
そこから、………なんだかぎくしゃくしてる。
話しかけても、つんとしている雰囲気をまとってて。
いつものおとぼけ翔の片鱗はなく、むしろ冷やかな視線を浴びている気がするのだ。
………だけど、これのどこに怒る要因があるのか、謎なのだ。
カラオケ嫌いだったのかなぁ………。
