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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


買い物を終え、最新機種のパソコンやスマホを見に家電量販店をめぐり、やっと駅前のファーストフードに落ち着いた。

約束通り潤におごってもらったハンバーガーとポテト。プラス、自分で買ったセット商品。
潤も同じくらい買い込み、トレーを二人でいっぱいにして、遅い昼御飯だ。

二時をまわった店内は、家族連れは少なく、俺らのような学生が多い。

窓際席に座った俺たちは、ペコペコなお腹を早速満たし始めた。
寮に戻ったら夕飯が待ってるけと、そんなの関係ない。
みんなと同じ量の夕飯を食える自信があった。
成長期なんてこんなもの。


「翔って、華奢だけど、意外に食うんだよなぁ」


潤がポテトをつまみながら、俺をじいっと見つめて笑う。
二個目のハンバーガーをぺろりと食べ、包み紙をクシャクシャ丸めながら俺は、肩をすくめた。


「潤こそ。三つも食べて大丈夫?夕飯残したら茂子さん悲しむよ?」

「よゆー」

「ふふ。燃費いいね」

「まあな」


この穏やかに流れる空気が心地いい。
潤の静かに笑む顔が、好きだな。
ぼんやりそんなことを考えながら、手に持ったドリンクをちゅうっと吸い込む。

この春にでた新商品。
フルーティーな微炭酸。
ほんのりピーチの味がして美味しいな、と思ってたら、潤がふいに


「それどんな味?」


と、聞いてきた。


「んー桃味?」

「味見味見」


言いながら、潤が手をのばしてきたから、ドキリとして、一瞬固まってしまった。

ぎこちなく、カップを差し出すと、俺の手に添えられる俺より少し大きな潤の手の温かさに、また胸がドキドキする。

そのまま、ストローに顔を近づけ、潤の形のいい唇が触れた。

少し伏し目がちになった瞳。
至近距離でみたら、睫毛がとても長いことが分かる。


「お。桃もうまいな」


唇をはなして、にっと笑った顔が眩しすぎて、心臓がドキドキ音をたてた。

なんだ、俺。
どーしちゃったんだ………?


「ん。これマスカット。飲んでみ」


潤に差し出された彼のドリンク。
震えないようにするのが精一杯で、味なんか全然分からなかった。


「これもうまいだろ」

「………うん」


体全部が心臓になったみたいだ。

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