
キラキラ
第23章 🌟🌟🌟
Miya
櫻の国お抱えの医者に飲まされた異国の薬が、どうやら体にあっていたみたいで、体の怠さや痛みは、数日たつと大分ましになっていた。
「漢方っていうんだってね」
マサキ王子が、茶色い粉を、グラスとともに手渡してくれるのを、すみません、と受け取り、顔をしかめて飲み干した。
「……」
「苦いの?」
「……すごく」
口をおさえて、顔を歪めると、クスクス笑った王子が、おもむろにポケットから何かを出した。
口開けて、と言うから、訝しく思いながらも素直に少しだけ口を開けたら、ゴツゴツした小さなものが口のなかにほおりこまれた。
「こんぺいとうっていう砂糖菓子だよ。おいしいでしょ?」
「……はい」
ふふっと微笑まれ、俺はどういう顔をしていいのか分からず、うつむいた。
カリカリ固い食感だが、少し噛み砕くとふわり、と舌先で甘味がほどける不思議な菓子だった。
苦味が消え、甘味が口のなかに広がり、ほっとする。
後ろで、腕組みして立って見守っていたジュン王子が、ふと口を開いた。
「…にしてもさ。おたくの姫様、とんだじゃじゃ馬だな」
「…そうですか?」
「あの修羅場のとき。口調も、男顔負けだったし、俺の手を振り払う力も凄かったぞ」
「……」
確かに。あれはまずい。
サトコ様は取り乱して、素をさらけ出していた。
姫どころか、完全に男だった気がする。
「……昔から怒らせたら恐い方なので」
「だとしたら、怒らせないようにしなきゃだな」
ジュン王子が肩をゆらして笑った。
誤魔化せたかな……
俺は心配になって、思わず聞いた。
「……お嫌いになりましたか」
「誰を?」
「……姫です」
「まさか。あんな勝ち気な姫様、最高。ますます好きになった」
言って、ニヤリと笑うジュン王子に胸を撫で下ろした。
良かった……Mっ気のある人で。
「でもさ。あんたは、ホントにこれでいいの?」
「……」
「俺らに姫を託すなんていうけどさ。肝心の姫の気持ちは置いてきぼり、なんじゃないの」
「……でも、私があの人を縛っていたらいつまでも……」
「それは、ミヤさんのエゴだよ」
マサキ王子が、黒目がちな目を潤ませて、ぽつりといった。
「……恋心を切り捨てられるのって辛いんだよ。それが真剣であればあるほど」
「……」
分かってる。分かってるけど…。
