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キラキラ

第23章 🌟🌟🌟

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温かい手に包まれている感覚に、ふと、意識が浮上した。

ぼんやりとうつるのは、見たこともない天井。

……自分はどこかに横たわっているのか。

………まだ。生きてる。

頭を預けてる大きな柔らかな枕からは、ふわりといい香り。
体に感じるシーツのサラリとした感覚と、肌掛けの温もりが、現実を伝えてきてた。



何より、自分の手を握る……手。

誰か、なんて確認しなくたって分かる。

僅かに頭を動かし、視線をさまよわせば、俺の手を両手で握り、ベッドサイドにつっぷしているサトコ様がいた。

長い髪の毛をおろし、借りたものなのか、見たこともないカジュアルなワンピースを着てる。

……いつも青い服をお好みだけど、黄色い服もお似合いだ。

伏せられた長いまつげ。
白い肌。

頬には、涙の跡があった。

たまらなくなり、そっと手に力をこめたら、その睫毛がゆっくり開き、綺麗な瞳が俺の顔をとらえた。
そうして、サトコ様の驚いた顔は、みるみるうちに泣き顔に歪んだ。

「ミヤ…!」

「…申し訳ありません」

こんなことになって、と続けようとしたら、勢いよくがばっと抱きつかれる。
瞬間に、周りに人はいないのか、と警戒してしまう自分が嫌になる。

「あの…」

「ごめん……!おまえがこんな辛い目にあうなら、来なきゃ良かった……!」 

サトコ様はそのまま俺の上に突っ伏して、えんえん泣き出した。
俺は、ゆっくり腕をあげて、サトコ様の背中を優しく撫でた。

「……サトコ様のせいじゃない。誰のせいでもないです」

「だって…こんなの……っ」

「運が悪かっただけだ」

「ひどいよ…っ」
 
「……サトコ様」

「やだ……っ…こんなんやだっ」

サトコ様は、小さい子供のように、号泣してる。
こんなに泣くサトコ様は、数年前に兄上と喧嘩して以来久しぶりに見た気がする。

やだよ……っと俺のために泣いてくれてるのがいとおしくて、心が揺れる。

俺は、ふっと息をついた。

「…サトシ。顔……見せて」

ぴくりと肩を震わせて、サトコ様……サトシがゆっくり顔をあげた。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。

くすっと笑って、頬に指をはわせて涙をぬぐう。

「ごめん。心配かけた」

「……謝んなよっ」

「じゃ、どーすればいい?」

静かに問う。





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