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キラキラ

第23章 🌟🌟🌟



コツンと小石につまずき、その場に崩れるように倒れこんだ。

「……!」

回転する世界。

その瞬間、自分の体を支えてた気力も、プツンと途切れた。

体が別の人のもののようで。

……もう、起き上がれなかった。


…………喉渇いた……


無様に地面に頬をつけたまま、太陽が傾き始めた空を見つめる。

西日がきつくなり、辺りは、闇の気配がひたひたと忍び寄ってきてるのが分かった。

こんな寂しいところに、このままずっと倒れていたら、また誰かに襲われるかもしれない。
そんなことになったら今度こそおしまいだ。
早く城に帰らなくちゃ。

……なのに。

砂をつめられたような重い体と、刺すような痛みと。激しい頭痛。
時おり、せりあがってくる嘔吐感に、耐えるのに精一杯。

……なにも考えたくなくて。

限界だった。


…苦し………


男にはさんざんに抱き潰され、文字通り捨てられた。
屋敷から遠く離れた辺りで、走る馬車から、ドサリと落とされたのだ。

俺を屋敷に置いていたら、証拠が残るからだという。
殺したら後始末に面倒だからだ、という。

手っ取り早いのは、ひっそりと行方不明になってもらうことだそうだ。

自分はどこか異国の地に行き、身をかくすと、呟いてた。

……まあ。俺なんかの身分のものを襲うくらいの出来事に、櫻の国が動くとは思えない。
あの男の逃亡劇は全うされるだろう。

もっとも。
俺が、いまだにこんなに動けたことは、やつには計算外だっただろうがな。
なんとか、森を抜け、道のあるところまで出ることができたのだから。

俺も、正直助かるかも、とは思っていた。

でも。

よほど辺鄙な場所なのか。
人も馬車も全く通らない。

誰にも見つからない、ということは帰れないということを意味する。
 

……もう…ダメかな…


ふっと笑いがこみあげた。
このまま……のたれ死ぬのも悪くないかもしれない。


………サトシ…


脳裏に浮かぶのは、穏やかに微笑む、俺の愛する人。
栗色のサラサラの髪の毛に触れるのが好きだった。
照れるように色づいた頬にキスするのが好きだった。
時々、俺を抱く、熱い雄の瞳も好きだった。


サトシ。
ごめん…俺は、帰れないかもしれない。




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