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キラキラ

第19章 バースト3


「……え」


「気のせいかなあ……」


答えに言い淀む俺。
違う?と、聞きながら、翔は、そんな俺の口元に、ストローを差し出した。

冷たいスポーツドリンクのそれに素直に吸い付き、コクりと、飲み込んで、翔を見上げ、ふっとため息をついた。


怖い?
……そうかも。
だって、翔のことを考えるだけで、胸がドキドキするから。
チカラも暴走してしまうかもしれないから、なるべく、考えないようにしていたくらいだよ。


……とは、言えない。


大きな瞳に、見つめられ、なんだかいたたまれなくなった。
話題をそらそうと、何気なく自分の胸に手をやると、自分のものではないTシャツを着ていることに気がついた。


……あ……


デザインに覚えがある黒のこのTシャツは、確か翔のものだ。


……大野家の香りがする。



「……服」


呟いたら、


「いいよ。貸してやる。お前いつも家では裸?」


思い出したかのように翔が笑う。


「え?真っ裸?」


かずがびっくりしたように目を丸くするから、俺は、苦笑して、首を小さくふった。


「いつもじゃないよ。……今日は、暑かったから」


なんで、よりによって、裸だったんだろ。 
ちゃんと服を着てる日が大半なのに。

大暴走の、原因は絶対そこにもある気がする。


ああ……俺のバカ。




「潤くん何で最近来なかったの?」


かずが俺の目線にあわすようにしゃがみ、可愛く首をかしげた。


……答えられない。


俺がじっと黙っていると、


「課題終わりそう?……つか、今日せっかく会えたのに、なんにも、持ってきてないでしょ」


かずが、あーあ、というように笑う。


「だーかーらー。緊急事態だったの!」


翔の手が、な?というように、俺の髪にふれた。


「…っ」


ドキリとした。


そしてドキリとした自分にドキリとした。


また跳ぶ……?!



しかし、ぐるんと、少し眩暈がおきただけで、それはならなかった。
体内のチカラを、使い果たしてしまったのだろう。
というより。
わずかに回復してたものを、またゼロにしてしまった気がする。

体の重さを感じながら、翔の指を感じていた。

まるで恋人にするかのように、長い指で髪の毛をすいてくれる。
その手つきの優しさに、泣きたくなった。






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