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キラキラ

第19章 バースト3


Sho


黙って、じっとしている潤の髪にふれた。

指ですくと、ふわふわしていて気持ちいい。

潤は横向きに寝ているから、表情までは見えなくて。
だけど、彼が嫌がるそぶりを見せないのをいいことに、俺は、長いこと髪をすき続けた。

かずは、そんな俺と潤を、しばらく交互に見ていたけど、やがて悟ったかのような表情になり、よいしょ、とわざとらしい声を出して立ち上がった。


「……今日って智さん遅い日だっけ?」


「ん?……ああ。確か飯いらないって」


知り合いとメシって言ってたけど。
多分、松岡さんとデートじゃねーかな。


「ふうん……ね、潤くん。相葉くんって、今日は部活?」


「……多分」


潤が、怪訝そうに小さな声で答える。


俺も、きょとんとしてしまった。
……相葉くん? 
なんだ突然、と思ってたら、


「そう。んじゃ、待ち伏せしてつかまえよ。ファミレスで勉強でもみてあげようかな~」


「え?」


は? 外出嫌いなかずが、どこ行くっつった?
ファミレス?相葉くんと?

唖然として、目の前で大きくのびをしているかずをみつめる。


「あいつ、絶対俺の誘いは断らないはずだもん」 

 
楽しそうに言いながら、外出の準備をはじめたかず。
自室に戻ろうとする後ろ姿を、慌てて追いかけて、細い腕をつかまえた。


「ちょっと……かず?」

 
「なあに?」


「なあにって……おまえ」


かずは、ふふっとまた楽しそうに笑って、人差し指をくいくいと動かした。
言われるままに背の低いかずにあわせてかがんだ俺に、かずは内緒話をするかのように小さく囁いた。


「あのさ。翔さん。当たっても砕けないよ。多分ね」


「……どういう意味」



「you 恋しちゃいな」



「……はっ?!」


おおよそかずに似つかわしくない言い回しで、からかわれる。
俺は、混乱して、思わずかずの言葉の真意を探ろうと、じっとかずの顔をみつめた。
すると、かずは俺がつかんでる手を静かにはずし、にっこりした。


「言っとくけど心は読んでないよ? でもさ、分かっちゃったんだよね」


「……なにが?」


だけど、おっと、これ以上は黙っておこう、とおどけたかずは、リュックの中にノートやらテキストやらをあれこれ詰め込み。
んしょ、と背負ってキャップをかぶった。


「じゃ」




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