
キラキラ
第19章 バースト3
平日の昼下がりに、インターホンをならすやつなんか、セールスか、宅配か、くらいだろう。
めんどくせぇな……
セールスなら居留守を決め込むつもりで、自室二階の開け放った窓から、真下にある玄関をそおっと盗み見た。
「……えっ!」
ドキリとして思わず声が出た。
慌てて口をおさえたけど、もう遅くて。
玄関前に立っていたのは、今心をしめていたその人。
デニムのシャツに黒のハーフパンツ姿の翔が、俺の驚いた声に顔をあげた。
……ばっちり目があってしまう。
よお
翔がニコリと笑って、口がそう動いた……のをかろうじて確認したと同時に、キンと耳鳴りがした。
ほらっ!
ほらほらほらっ!!
翔に会ってしまったらこうなると思った。
眉間にしわをよせて、思わずその場にしゃがみこんだ。
ずっと、ふつふつと体の奥底で煮えていたチカラが、瞬間的に爆発したのが分かった。
「……ぅ……」
暴れまわるチカラにとりこまれそうになる。
このチカラってのは、俺の精神状態に本当に従順で、不安定な心に見事にリンクしたものだから、激流のように乱暴に俺の視界や感覚を奪っていく。
跳ぶだけなのに、中途半端に俺が抗うものだから、凄まじい力におしつぶされそうになり、思わず呻き声がでた。
「う…っあ……」
「……なにしてんだよ……」
翔のあきれた声が耳に入った。
至近距離で、翔の気配を感じて、ぎゅうっと閉じていた目をうすく開いた。
うずくまっている体をささえられなから起こされた。
「……そこまで驚くことないんじゃねーの?(笑)」
「あ…鍵……閉まって……」
「俺を誰だと思ってんの。んなもん指一本であけれるって」
ほら、こっち見ろよ、と俺の両頬に翔の両手が添えられ、強引に上向かされた。
漆黒の瞳が、じっとこちらを見つめてるのが分かり、またもや、胸が高鳴る。
同時に、爆発的にチカラの勢いが増し、煽られた翔は眉をひそめた。
「……なんだよ、どうした?」
「……わかんなっ……」
「落ち着けよ」
落ち着けるかっての!!
俺は、激しく首をふった。
翔が俺を抱き締めた。
上半身裸だったことを思いだし、また頭がカッとなった。
当然、またチカラの勢いも増すわけで。
「……あー……これ、押さえんの危険。跳んだ方がいいかも」
翔が呟いた。
