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キラキラ

第19章 バースト3


Jun



暑い暑い昼下がり。
窓を開け放してても、風なんてそよとも入ってきやしない。


俺は、上半身裸のハーフパンツ姿で、ベッドにゴロリと寝転がっていた。


手には、スマホ。
画面にでてるのは、ラインの翔とのやりとり。
 

さっきから、一言うちかけては消し、文章をつくりかけては消していた。


今までに何回かきている「いつくる?」の言葉。


そのたびに、また連絡するね、と返事を打ち返していたが……。


昨日も入ってた。
お母さんの夜勤はいつ?って。
既読つけたから、返信しなくちゃ、と思うのに、指が動かない。


俺がやらかした失敗の尻拭いはすべて、翔たちがしてくれた。
その報告の連絡があったときは、さすがに電話をかけ、礼を言ったよ。

翔も、かずも、大野さんも、気にするな、と優しく言ってくれて、申し訳なくて電話口で泣きそうになった。


また来い、と。
言われて、はい、と返事したのが10日前。


……それからだ。
きっと、安心して、余計なことを考える余裕ができたんだ。
大野家に行こうかな、と考えるたびに、翔にキスされたことが、思い出され、体が勝手に熱くなるのだ。

あの日。
深夜まで、誰にも会う気がしなくて、一人跳んだまま雲隠れした日。

跳ぶ瞬間にキスされた。

静かに優しく重ねられたそれの意味を、あれからずっと考えてる。 

あの日は、跳ぶ手段のひとつだったのだろうと、御礼まで言っちゃったけど、よく考えたら違うよな。
だって、もう跳びかけてた。

ぷるんとした柔らかい唇を押しつけられ、心臓が鷲掴みにされた。


「……はあ。どーしよう」


汗ばんだ額にかかる前髪をかきあげる。

思い出すだけで顔も体も熱くなる。
ただでさえ、蒸し暑いのに、変な汗かいてくるんだ。

そして、もうひとつ。
翔のことを考えると、体の奥底にあるチカラが暴れだしそうになる。
感情の揺れが半端ないから、チカラも暴走寸前に陥る。

本人目の前にするとどうなるか分からない。

しかも、もし、踏みとどまれたとしても、この揺れる思いを説明できない。



……やっぱり断ろう。


俺は、意を決して仮病作戦をつかうことにした。そうして、スマホの画面に、「ごめん。風邪をひいた…」とうちかけた。


そのとき。


ピンポーンと、とぼけたインターホンのなる音が家中に響き渡った。


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