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キラキラ

第19章 バースト3

かずが、興味津々といった顔で体を乗り出してきた。

……ったく……。

俺は、苦笑して小さく肩をすくめた。


「……あの日は、遅かったし、すぐにシャワーして寝ただろう?だから、あまり喋ってないし覚えてないよ」


「ふうん……」


かずがつまんなそうに口を尖らした。


……いったいおまえは、俺にどういう答えを期待してんだよ?(笑)



俺は、かずの視線から逃げるように、傍らの水滴が浮いたグラスをつかみ、麦茶をごくごくと飲みほした。

かずは、少しの間、そんな俺をじっと見つめていたが、再び、皿の上の蕎麦に箸をつけた。



俺は、ちょっと吐息をつく。

嘘だよ。

覚えてないなんて嘘。

本当は全部覚えてる。


潤とキスしたのは二回目。
でも一回目は跳ぶ手段でしかなかったから、なんとも思わなかった。

今回は、触れるだけの、おままごとみたいなキスなのに、柔らかい感触や、潤の香りに、俺は、猛烈に興奮した。

もっとがっつきたいのを我慢して、ゆっくり唇を離したら、潤は、赤い顔でうつむき、小さく「ありがと」と言ったんだ。

迎えに行ったことに対してなのか。
跳ぶことに対して、いろんな意味で手助けをしたからなのか。


すごく……すごく可愛い反応だった。

あとになって、反省したけど、嫌がってるようにはみえなかったのが、救いだった。






「翔さん」


「なんだよ」


邪念をはらうように、俺は、残りの蕎麦をまとめて、そばつゆにつっこみ、ずずっとかきこむ。


「ちょっと潤くんに、会ってきなよ」


「……なんで」


もぐもぐしながら顔をあげたら、かずは、ちゅるっと蕎麦をすすって、にこりとした。


「顔にかいてある。潤くんに会いたいって」


「ばっか。んなわけねーだろ……」


そんな女子高生みたいなことできるかよ。
だいたい、俺は、受験生だ。
忙しいんだ。
このあとも勉強だ。


なのに、かずは食い下がる。


「じゃあ、俺が勉強みてあげたいから、連れてきて?って言ったら?」


「……チカラで、呼べよ」


「ダメだよ。夏の間の俺の体力の無さ知ってるでしょ」


「……」


「チカラなんか使ったら寝込んじゃうー!」


「……」


「ね。よろしく。あ、ケータイですましたら駄目だよ。ちゃんと連れて帰ってきてね」


「……」


マジか。


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