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キラキラ

第19章 バースト3


Sho


世は夏休み。

もはや騒音に近いくらいのセミの鳴き声と、アスファルトからゆらゆらたちのぼる熱気。
つけ加えて、恐ろしく照りつける強い日差しに、日中は全く外にでる気がしない。

俺は、受験生である。
それゆえに、クーラーがガンガンにきいた部屋で、日がな一日ずっと勉強してすごしている。

たまにする料理などの家事は、いい気分転換。
かずが好きなハンバーグや、智兄が好きなタコ酢をつくると、二人ともすごく嬉しそうな顔をするから、こちらの気分もよくなり一石二鳥だ。

家の外にでるのは、夜、智兄の車で、時々買い出しにでるくらいであった。


充実した高三の夏をおくっている方だと思う。


……ただひとつ気になるのは。





「……ねえ、翔さん。潤くん、なんで最近来ないの?」


昼御飯のざる蕎麦をすすりながら、ぽつりとかずが聞いた。


「……知らね」


俺も、もぐもぐ咀嚼しながら、首をふった。


でも。


…実は俺も気になってるんだよなあ……。



あの、潤のぷち失踪から、二週間がたつ。

今まで母親の夜勤にあわせて泊まりに来ていた潤は、一週間に1回、もしくは2回、必ず顔を見せていた。

だけど、あの一件以来、それがぱたりと途絶えていた。


「夏休みの課題教えてあげる約束してたんだけどな」


大丈夫なのかな、と、ちゅるちゅる蕎麦をすするかず。
俺は、ねぎの浮かんだそばつゆをじっと見つめながら、潤とのやりとりを思い出していた。


ラインは、何回か入れた。


いつ来る?、と。
みんな待ってる、って。


だけど、それに対する返事は、ありがとう。また連絡するね、の一点張り。


それだけで電話するのもおかしいし。
たかが二週間会ってないだけで、モヤモヤするのも変だと思う。
返事があるのだから、元気にはしているのだろう。

でも、もはや大野家にすっかり馴染んでいた潤が姿をみせないのは、やはりなんだか寂しかった。


「例の件はカタついてるのにね」


「……ああ」


北川という雑誌編集者が保管しているという、俺らが飛んでる画像は、かずが読み、智兄が視て、俺がもれなく消去した。

また、潤が跳んだ件に関しては、智兄が、黙らせたって言ってた。

不貞が、どうとか言ってたな。

……詳しくは教えてはくれなかったけど。


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