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キラキラ

第19章 バースト3

「さ、帰ろうぜ」


その場を軽くするかのように明るく言って翔が立ち上がった。
俺も続けて、ノロノロ立ち上がる。
ずっとコンクリートに寝そべっていたから、肩と腰が痛かった。

翔がこちらに手を差し出す。


「?」


ほら、と、翔が手をひらひらさせてくるから、一瞬考えるが。


手……ああ、跳ぶ準備ね。


言われるがままに、手を出すと、俺の指が翔の細い指にするりと絡めとられた。

冷たい指。
だけど、翔のチカラが流れ込んでくるとすごく温かくなるって、俺は知ってる。


俺は、ゆっくり深呼吸した。


よし、跳ぶぞ、と言って、すぐに跳べりゃいいのにな。


翔に、肩を抱き寄せられて、中途半端にドキドキした胸を抱えては、集中なんてできるわけない。


そんな自分の気持ちに戸惑い、ユラユラしてるから、なんだかチカラもぶれぶれだ。


目を閉じた。


「………」

でも、いくら頑張っても体の内側からわきあがるものがなにもない。



集中しきれない俺を見て、翔が俺を下からのぞきこんでるのが気配で分かった。


「……ごめん。ちょっと時間かかりそ……」


眉を下げ、目を開けると、思ったより近い位置で、ふわりと髪の毛をゆらしながら、イタズラっぽく微笑んでる翔がいて。
ぴくりと体を震わせ、硬直したら、………そっと囁かれた。


「……キスする?」



「っ!」



ドキリとした。


瞬間、キンと耳鳴りがする。
俺が跳ぶ準備に入ったのを見て、翔はちょっと笑った。


「なんだよ。はえーな。もっと煽らせろよ」


そう言って、くいっと引っ張られ、よろけた俺は、翔に抱きつく格好になった。


「家まで。よろしく」


「………うん」


二人で跳ぶために、密着してるのは分かるけど。


ドキドキが止まらない……!
さっきまでが嘘のように、こんこんと自分の体のうちから、熱いものが湧き出てくるのが分かる。



俺って、単純……



首筋にあたる翔の吐息を感じながら、どさくさまぎれに、翔の背中に手をまわした。


そうして、意識を大野家にもっていく。


目の前が白く染まる瞬間、…唇に柔らかいものが重なった…気がした。


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