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キラキラ

第19章 バースト3


Jun



空を見ていた。

寝転んで、ずっと、ずっと、雲の流れを追った。

夕焼けに赤く染まる世界が、静かに静かに藍のカーテンをひき、そして、ゆっくり夜空にかわっていく様を、ただただ見つめていた。



……都会のど真ん中でも、見ようと思えば星は見えるんだな。



ぽつりぽつりとだけ見える星の数をかぞえてみた。


跳んだ先は、都心のどこかのビルの屋上のようだった。
地上からの明かりが、暗闇をうすぼんやりと照らしている。
遠くから小さくサイレンや車のエンジン音がきこえるだけの静かな空間。

昼間の熱気がのこる、まだあたたかいコンクリートに体をあずけて、どれくらい寝そべっていただろう。



ふいに、隣に誰かが座った気配がした。



「………おまえシカトすんなよ。ここ見つけるの苦労したぞ?」



柔らかな声音。
首だけ動かして見上げれば、仕方ねえな、というような苦笑をうかべた翔が、こちらを見下ろしているのが分かった。


ああ……見つかったか。


翔の顔を見たとたん、ざわざわと心が再び揺れだす。
すぐに伝えなくちゃ、と思うけど、それによって、翔がどう思うのか怖くて。



……俺、大失敗したんだ。

一般人の前で、跳んだよ。
それも出版社の人間。
しかも、そいつに写真まで、とられてるんだ。


……なんて。

言ったら、どう思うだろ?


あきれられるよな。
……面倒くさいやつって思われるよな。


もやもやそんなことを思っていたら、
 


「……智兄の帰り待ってたら、こんな時間になっちまったじゃん」


「………」


どうした、とも、なぜだ、とも言わず、優しく優しく語りかけてくれる翔。

メールもラインも電話も。
かずのテレパスさえも。
フルシカトした俺を、怒ることもなく。


「帰ろう。潤」


寝転んだままの俺に、手をさしのべてくれる。


「……」


ねえ。おれはどうしたらいい?


平和に暮らしていた大野家の生活を崩しかねない事態になってることが、申し訳なくて。

何よりも三人に迷惑をかけること、それによって距離をおかれるかもしれないことが、一番怖かった。


あー……やば。

止まったはずの涙が、またゆらゆらと瞳にたまってきたのが分かり、こぼれないようにあわてて顔をそらして、ぐいっとそれを腕で拭いた。

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