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キラキラ

第19章 バースト3

静かに扉がしまり、ぺた ぺた ぺた とのんびりした足音がして。

リビングと廊下を隔てている扉が、また静かにあいた。


「……あれ」


不思議そうな智兄の声。

おかえり、と声をかけながら振り向いて、ギョッとした。
緊急事態だ、と伝えることを一瞬躊躇してしまうくらいに。

なんていうか……、どんな雰囲気を纏ってかえってくるんだ、あんたは!


「起きてたの?」

「あ……ああ……うん」


歯切れ悪く返事をしてしまう。
目のやり場に困る。

だって、いかにも「してきました」的な、雰囲気をプンプンさせてるんだ。
服装はきちんとしてるが、目の色と唇と香りが、いつもの智兄じゃない。
気だるい雰囲気が、異常なほどの色気をふちどってる。


この甘い香りはなんなんだ!

男の匂いはなんなんだよ!


こんな色気だだもれな、智兄なんか、智兄じゃねぇよ!


情けない顔でかずを見たら、かずも、あーあというように苦笑いしてた。
さっき、かずの能力で話しかけなくて正解だ。
絶対、真っ最中だったはずだ。

想像したら、なんだか、恥ずかしくなり自分の顔が赤くなってくるのが分かった。

今さらだ。

智兄と松岡さんは、恋人同士なんだから、とっくに、してることはしてるだろう。

俺だって。女の子限定だけど未経験じゃない。

でも…智兄が、抱かれてる側なんだろ?

………複雑。

まあ、あの松岡さんが、組み敷かれる画も、想像しづらいけど。


ぶつぶつ考えていると、いちはやく気を取り直したかずが、すぐに目に力をこめて、智兄に、自分の横に座るように促した。


「智さん。大変なんだ。すぐ視てくれる?」


「……どうした?」


そうだ、それどころじゃない、と我にかえった俺も、横から手早く事情を説明する。

「……」

黙って聞いていた智兄の目が、くっと、真剣味をおびた。


「……そいつは心配だな」


サラサラとおちる前髪を細い指でかきあげ、短く
吐息をついてる智兄。
ちょっと待ってろ、と言って、智兄が目を閉じた。

あとは、もう智兄の能力で、探してもらうしか方法がないから。


「ごめん、智兄。疲れてるのに」


思わず言ったら、


「……別に。疲れてなんかないよ」


片目をあけて、ふふっと智兄が笑った。


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