
キラキラ
第19章 バースト3
「すごいことって……なんだろうね」
ソファに座り、足を抱えこんだ膝に顎をのせて、かずがぼんやり呟く。
「さあな…」
俺は、グラスに残った炭酸水を飲み干した。
既にぬるくなったそれが、時間の経過を物語り、焦る。
もう深夜12時に近かった。
潤の家には、もう一日我が家に泊まることで、家の人には連絡ずみだが、さすがに明日もというわけにはいかない。
今日中になんとかしなくては。
潤……どこにいるんだ?
泣くくらい、弱ってる潤が心配でしょうがなかった。
大体、跳んだ先がどこか分からないなんて。
今までなかったことのはずだ。
かずの呼びかけに答えないのが、故意ならまだいい。
怖いのは、呼びかけに答えられない状況であることだ。
チカラを使い果たして動けなくなってやしないか。
跳んだ先で、トラブルに巻き込まれてやしないか。
なにやってんだよ……。
俺は、かずの向かい側に座って、一向に役に立たないスマホをながめた。
そうして、昨日の晩、抱き締めた潤の感触を思い出していた。
柔らかな女の子とは違う、堅い胸板と、ごつごつした背中。
だけど、こちらを見上げるすがりつくような瞳は、今まで抱いてきた、どの女の子より扇情的で。
いつもは、必要以上な強い目力を持ってるくせに、俺の前で見せる不安な色と、かすれた声に、胸が高鳴った。
白状すれば、チカラを消す目的ではあったけど、彼の体を抱き締めたのは衝動的ですらあったと思う。
どうしちまったんだろう…俺。
自嘲気味に笑いソファの背もたれに背をあずけた。
かずが、静かに目を閉じたのに気づく。
もう何度目か分からないが、潤にまた呼びかけてくれてるのだろう。
色白のかずの顔を見つめる
長目のちょっとクセのある前髪が表情をかくす。
さっきからチカラを使いっぱなしだけど、こいつも大丈夫だろうか、とふと思った。
しばらくして、残念そうに首をふり目を開けるかずに、体、大丈夫か、と声をかけかけた時、玄関の鍵がカチャリと鳴る音がした。
