
キラキラ
第19章 バースト3
とにかく、この人物の前で跳ぶことは絶対避けねばならない。
狭まる視界に唇をかみながら、俺は、北川から距離をおくように後ずさった。
その間も、視界は急速にホワイトアウトしていく。
まずい。
まずい。
焦るなか、周りにぼんやりと視線を巡らすと、雑居ビルの入り口が目に入った。
あそこに飛び込もう。
飛び込んだ瞬間に跳べたらいい。
最悪、姿が消える瞬間を見せなければ、ごまかしようもあるだろう。
さっさと自分でチカラを消せるようになれ、と翔には怒られるだろう。
せっかくのトレーニングが意味をなしてないのも承知してる。
でも。
断言できる。
あれは気持ちに余裕がないと、絶対できねえ!
俺のそんな変化に気がついているのかいないのか。
少しずつ後ずさる俺に、北川は楽しそうに微笑んだ。
その美しい笑顔に寒気がした。
まるで、話をきくまで逃がさない、とでも言われているようで。
俺は、コクりと息を飲み込んだ。
「じゃあ、これはなあに?」
北川は、楽しそうに手にもってたタブレットに、軽く指を這わせ、トンとタップした画面をこちらに向けた。
嫌な予感しかしなかったが、反射的に目を細めて狭い視界のそれを捉えた。
「……!」
心臓がなるどころか、とまったかもしれないほどの衝撃。
そこには、最大に拡大したのであろう、粒子の粗い画面ではあったが、……はっきりと夕空に浮かぶ人間をうつしだしていた。
二人の人間が、空を飛んでる。
合成写真のようにすらみえる。
沈む太陽をバックにしているから、逆光で表情はよく分からないから、幻想的な雰囲気すら醸し出している。
俺と……翔だ。
眩暈がした。
まずい、と分かっているのに、俺は、その場に崩れ落ちた。
北川が何か言ってる。
耐えれない……。
意識をつなぎとめきれないまま、俺は、白い世界に飲み込まれた。
