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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~

水を飲んだことで、しゃくりあげてた呼吸も落ち着いてきた。
大野さんは何も聞かずに、新しい冷却シートを額に貼ってくれた。

ヒヤリとした感覚に、少し目を細めると、

「気持ちいいか」

少し笑いを含んだ声で、さっきみたいにそのまま額に手のひらをのせられた。

ああ…………これ。安心する。

じいっと、大野さんを見上げる。
深い瞳。
翔ってやつと似てる。
綺麗な目だ。

大野さんの柔らかい笑顔と、纏う雰囲気に、心も落ち着いてきた。


「…………眠れそうか?」


コクりと頷くと、なにかあったら、向かいの部屋が俺の部屋だから呼べよ、と言いおいて、大野さんはゆっくり出ていった。

あの夢をみたら、決まってそのまま朝まで眠れなかった俺だけど。

…………静かに目を閉じる。

今日は、眠れそうだった。



***** ***** *****


次に目を覚ましたら、暗かった部屋が少し明るかった。
遮光カーテンの隙間から、光が差し込んでる。

未だ頭は重いし、身体も熱かったが、怠さは少しマシになってた。
視線を巡らすと、折り畳み式の小さなテーブルが置いてあり、その上に小さな小鍋とれんげ、水のボトルや薬がおいてあった。
その横にメモ書き。

俺は、ゆっくり体をおこし、力が入らない足を動かして、メモ書きを手にとった。
性格がそのままでているような、几帳面な美しい字だった。


具合はどうですか。
大野は仕事。
俺は、学校に行っています。
夕方帰るから、ゆっくり眠っていてください。
お粥作ったから、食べれそうなら食べて。
薬も飲んだらいいよ。
      
               翔


思わず、ふっと笑ってしまった。

なんなんだ、このお人好しな兄弟は。
見ず知らずの俺に、なぜ、こんなに良くしてくれるのだろう?

例えば、今、この家は他人である俺一人だ。
金品を盗んで、いなくなる可能性だって大いにあるのに。

バカじゃねーの…………。

二人の顔を思い出す。
悪い人たちには見えない。
悪い人たちだと…………思いたくない。

俺は、吐息をついて、着ていたスエットを脱いだ。

能力を使って、本心を読んでから判断しても遅くない、とは思うけど、でも、本当に二人が良からぬ人間だったら、俺は、……まじで人間不審になる。

どうかいい人のままでいてほしい。
そのためには。

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