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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~


Sho



大野家は、もともと頑丈な人間ばかりだから、病気になる人ってのがいなかった。

数年に一回くらいの割合で、母さんが寝込んでしまうことがあったが、その時は父さん含む男三人でキッチンをメチャメチャにして、お粥らしきものを作った記憶がある。

今は、俺もだいぶ料理の腕もあがってきてるから、そんなことはないけれど。


学校帰りにスーパーにより、うどん玉を買ってきた。

あいつ、あまり食欲が、無さそうだしあったかい麺なら、食べやすいだろう。
智兄には、天ぷらでものせてあげようかな?

そんなことを考えながら、自宅に着き、鍵穴に鍵を突っ込みカチャリとまわすと、思いの外軽い手応え。

「………」

鍵、かけ忘れたっけ。


朝の自分の行動を思い出しながら、扉をあけて、状況を理解した。


…………あの子の靴がない。


足早にあの子が寝ていた部屋に入る。


…………帰ったか。


布団はきれいにあげられ、着ていたスエットも畳まれて、重ねてあった。

だけど。
朝の時点でまだ熱があったはずだ。


あんな体調で出ていくか?
…………バカなやつだ。

苦笑いし、キッチンに向かおうと、ふと気がつけば、俺が書いたメモ書きの横の空白に、少し汚い字で


ありがとうございました。
お世話になりました。帰ります。
お粥。美味しかったです。
      
        二宮和也


小鍋のふたをあけると、少しだけ手をつけたあとがある。


…………美味いってほど、食ってねーじゃん。


不思議と残念な感情がわいてきた。

わけありな体をしていた彼。
この家に連れてくる義理は何もなかったけれど、なぜだか気になるという智兄の気持ちが、少しだけ分かった。
顔をみてるうちに、なんとかしてやりたい気持ちになったんだ。

まるで、弟を看病しているような感覚だった。

はあ…と、なんともいえないため息をつく。


…………つか。鍵開けっ放しで帰んなよな。



手にぶらさげたままのスーパーの袋が、カサリと音をたてた、


智兄。今日の夕飯はうどんだよ。

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