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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~

「は…………っ…………」


泣きながら目が覚めた。

心がしんどくなると、決まってみる昔の夢。

消したい過去の夢。




はあ…………もう、嫌だ…………




熱い涙が、次々にあふれて、こめかみを伝い、枕を濡らす。

震える手をあげて、手のひらで乱暴に涙をぬぐった。


自分に言い聞かせる思いも、いつもおなじ。


しょうがないじゃないか、知らなかったんだ。
みんな、心を読まれるのが嫌だなんて。

………だって。
母さんは面白がってくれてたもの。



「…………うっ…………く」

 
嗚咽がとめられない。

やり直せるものなら、やり直したい。

どこからまちがえたんだろう。
どこでボタンをかけ違えてしまったんだろう。

こんな能力いらなかった。
普通に生きたかった。

知らなくていいことまで、知ってしまう。

大好きな母さん。
酒乱な父さんとちがい、俺を本当に愛してくれていた。

そう思ってた。




………あなたさえいなかったら、離婚してるのに



    アナタサエイナケレバ




読み違えたかと思ったよ。

心のうちなんか、知らないにこしたことないのに…………そんなこと分かってたはずなのに。
読まなきゃよかった。


母さん。



母さん。




俺は、邪魔なのかな?




辛いよ…………。




俺は、何回同じ間違いをして、何回同じように傷つくのだろうか。
聴こえてしまう思いを、言葉を。
スルーできる強い心が欲しい。



「…………っ………うっ…………」


すずっと、鼻をすすったタイミングで。部屋のドアが遠慮がちなノックとともに、静かに開いた。


なんだよ…………入ってくんなよ…………


これだけボロボロに泣いてると、ごまかせないじゃないか。


スーツを着てた方の人だ。
今は、ラフなスエットとTシャツをきてる。

困ったような表情で近寄ってきて、俺の傍らにしゃがみこんだ。


「…………大丈夫か」


枕元においてあったタオルを手に取り、俺の目元をふいてくれる。


なんで……このタイミングで来るかな…?


疑問の目を向けると、苦笑いしてその人は、ふにゃり優しく笑った。


「…………すっげーうなされてる声が聞こえたからさ」

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