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キラキラ

第37章 寵愛一身


俺に怒鳴られた准一は、まるで、面白い玩具を取り上げられたような顔になった。

だけど、これ以上、いまここで揉める必要もないと感じたのか、


「……しょうがない。出直すわ」


そう呟いて、踵を返した。
ゴウが慌ててそのあとをついていく。


「二宮ー!またな!」


そうして最後に准一は、何事もなかったように、笑顔で手をふってきた。


…………なんだ、あの人


これだけの騒ぎを起こしといて、俺には普通に手を振るその神経がよくわからない。

俺は、完全無視で、松本の腕をとった。


「……大丈夫ですか」


ずっと変な風にねじりあげられていた腕を一生懸命に擦る。
折られてはないだろうけど、だいぶ痛めてるはずだった。

その証拠に松本の指先はずっと震えている。


「……大丈夫だ」


松本は座り込んだまま、無事な方の腕で俺の体を抱きしめた。


「なんだこれ。おまえ、あいつに喧嘩売られたのかよ」


上田が怒ったように言うから、松本は、まぁな、と頷いた。


「盛大に売られた」


言って、俺を抱く腕に力をこめた。

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