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キラキラ

第37章 寵愛一身

しばらくファーストフード店の前に立っていると、俺を見つけた松本が、微笑みこちらに歩いてきた。


……ホッとして何故だか泣きたくなった。


俺は、ふらふらと松本にむかって歩き出す。


すごく会いたかった。
すぐにでも抱き締めてほしいと思った。


なのに、准一の顔がちらつく。


……初対面の相手にキスされてしまったことを、松本に言うつもりはない。
でも、告白されたことは、やっぱり言うべきなんだろうか。


「カズ」


松本が俺の前にたって、頭をポンポンと撫でた。


「いなかったら心配すんだろーが」

「……はい」

「連絡くらいしてくれ」

「……ごめんなさい」


いろんな意味をこめて謝る。


松本が女子高生に告白されたことを黙っていたこと……今なら分かる。
言えないね。
わざわざ、松本の心がモヤモヤすること。


俺は、いこうか、と、歩き出した松本の制服のシャツのすそをつかんだ。


「ん?」

「ここ……つかんでていいですか」

「……(笑)……可愛いこというじゃん」


松本に笑われて、俺も泣きたいのを誤魔化すように笑った。

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