テキストサイズ

キラキラ

第37章 寵愛一身


ファーストフードに飛び込むと、ついさっきまで俺が座ってた場所……待ち合わせの定位置の場所には違う男子高校生が座っていた。


……あれ……


店内を見渡しても、松本の姿はみつけられない。
腕時計を確認すると、とっくにここについててもいい時間だ。

本当に遅れてるのか、それともここにいない俺を不審に思って探しにいったのか。

あわてて、鞄からスマホを取り出す。
画面を撫でると、すごい量の着信が入ってるのをみつけ、気が遠くなりそうになった。

俺は、ファーストフードを出ながら、折り返す。

すると、コールもしないうちに、


「カズ?」


静かな松本の声が飛び込んできた。


「どうした?どこにいる?」

「んと、店の前です」

「……そこ、行ったけど、おまえいなかったぞ」


…………どうしよう。准一とのことをいうべきか。


一瞬迷う。

でも同時に、唇の感触を思い出してしまって。


……言えない


俺は、拳で自分の唇をもう一度拭って、振りきるように明るく言った。



「……ごめんなさい。ちょっと用事をすませてて」


言えるわけない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ