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キラキラ

第37章 寵愛一身


みたところ、この場にいるのは、この二人だけだ。
幸い、俺を大勢で囲んで、ボッコボコというような最悪な展開ではなさそう……。

張っていた気を少しだけ緩め、俺は腕時計をちらりとみた。

そろそろ二年生も下校が始まる時間帯だ。
用事はさっさとすませたい。


「……待ち合わせしてんだけど。用件は?」

「おまえ……その口調やめろってんだ」


俺に被せるように、ロン毛が凄んでくる。

巻き舌が、うざい。
唾飛ぶだろ……


俺が、迷惑そうな顔をしたのがおかしかったのか准一はまた笑った。


「……度胸はあるな。俺らが怖くないのか」

「別に」


二人だけならいざとなれば逃げれる自信はあるし。
常に周りがヤンキーだらけの生活をしてるから、ある程度の免疫はついてる。
なんなら上田の方が何倍も怖いし。


俺が、じっと黙ると、准一はおもむろに立ち上がり、こちらに歩いてきた。


「…………」


背は高くないけど、やはり体ができてる。
圧がすごい。
オーラもすごい。
こいつは、こいつらの学校の頭だと確信する。

悠然とした准一は、俺の真ん前で立ち止まった。
松本とは、違う香水の香りがふわりと香った。
バニラ系の香り。
俺は苦手だ。


……准一の右手がうごく。


平手の一発でもくるのか、と、俺が、避けようと身構えると、……その手は、すっと俺の顎に添えられた。

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