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キラキラ

第37章 寵愛一身


「あー…もう年内は帰ってけーへんわ」

「……え?」

「潤の母ちゃんデザイナーやねん。超多忙で、いっつも世界を飛び回ってはるわ」

「そう……なんですか」

「父ちゃんは、外資の企業の偉いさんで、これまた外国にいてることが多くてな。潤はいつも一人で留守番」

「…………」


そんな……。
こんな大きな家でひとりぼっちだというの?

俺が気遣う顔をしたからだろう。
従兄弟さんは、だから俺がいるんや、と胸をはってみせた。


「俺は関西やけど。たまに休暇とって潤の様子みがてらこっちで何日間か一緒にすごしてんねん」

「え……ご飯とか、どうしてるんですか」

「朝にお手伝いさんがきて、掃除とか洗濯とか。夕飯の支度とか全部してくれとる」

「…………」



衝撃的だった。

つきあって間もないとはいえ、こんなにも俺の知らない松本がいるなんて。

俺はオーレを飲むのも忘れて、ぼんやりと従兄弟さんの顔を見つめていた。



なんか……いろいろモヤモヤする。


というより、俺は自分にモヤモヤしていた。


どうしてこんなにあの人のことを知らないんだろう。
好きならば、もっと相手を知りたいと思うのは当然だ。
こんな気持ちになるなら、自分から、もっと近づかなきゃダメなんだって気づかされた。


俺はずっと受け身だった。
松本が触れてくれない、話してくれないじゃなくて。


自分から聞いていいんだ。主張していいんだ。


……触れていいんだ。


そうしなきゃダメだ。

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