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キラキラ

第37章 寵愛一身


だが。


そうだよ。
ただの後輩じゃないよ。


なんて、いえるわけもなく。


俺は、言葉を選びながら、


「とても……よくしてもらってます」


と言った。

すると、従兄弟さんは、俺の顎に指をかけ、くいっと持ち上げた。
強制的に顔をあげられ、俺は思わず後退りしかける。

従兄弟さんは、そのガラス玉みたいな目をほそめ、俺を値踏みするようにじっとみつめてきた。


「昨日も思ったんだけど、自分……犬みたいやな」

「……え……」

「潤に忠誠でも誓ってんの?」

「…………」



息をのむ。

これはからかわれてるのか……それとも、探られてんのか。

サイボーグみたいな美しい人の表情からは、判断ができなかった。

俺が黙ってると、彼は、ふっと笑って指を離した。


「……入るか?あいつ寝てるかもしれへんけど」

「……いいんですか」

「だって。会いに来たんやろ」


ドンズバの言葉に、俺はまた固まる。

従兄弟さんは、微笑み、俺の返事を待たずに家の方に歩きだした。

ふわりと香る香水が、大人だな……なんて思いながら、俺は追いかけた。

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