テキストサイズ

キラキラ

第37章 寵愛一身


「早退……?大丈夫なのか」

「はい、あの……」


実は嘘です、となんだか言えなくて。


「もう……治りました」

「そうか……」


松本は、ホッとしたように俺の頭を撫でた。
その大きな温かな手のひらが、たまらなく
嬉しい。
松本に触れられたところが、ぽかぽかした。



「あの……まつも……潤くんは大丈夫ですか」

「ん?……ああ、大丈夫。大袈裟なんだあの人」


松本は、前髪をかきあげてため息をついた。
でもその横顔はいつもより白い気がして。
俺は自分より高い位置にある彼の目をじっと見つめた。


「……熱があるって、あの人……」

「とうに下がった」


ぴしゃりと言い切る松本の言葉は、信憑性にかける。
でも、追求したところで、はい、ありますとは言わないだろう。
俺は、質問をかえた。


「……あの人はどなたですか?」

「従兄弟」

「いとこ……?」

「年は大分離れてっけどな。関西に住んでて、たまにこうやって遊びに来る」

「……そうなんですか」

あの妙に親しげな感じに合点がいく。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ