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キラキラ

第37章 寵愛一身


そのとき、目の端に玄関の扉がもう一度開いたのが見えた。


「あ……」


思わず声が出て、俺の前の青年も、つられるように振り返った。


「何してんねん……起きたらあかんいうたのに」


あきれたような呟き。

俺たちの目の先には、少しふらつきながらも、しっかりとこちらを見据えて歩いてくる松本の姿があった。

グレーのTシャツに黒のハーフパンツ。さらには黒ぶちのメガネという、今までみたことのないラフな格好の彼は、完全なオフモード。

なんだか俺は立場も忘れて、ドキドキしてしまった。

彼の体を案じる気持ちや、顔を見れた嬉しさで何を言ったらよいのかわからない。

だが、俺以上に、戸惑ってる表情の松本は、門扉の鍵をあけながら、


「……カズ………学校は?」


開口一番に、それを聞いてくる。


「あ……えと……」

「ニノミヤくんも頭痛で早退してんて~」


その人は、面白そうに口を挟んでから、あとは任せたとばかりに、踵を返して家に戻っていった。

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