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キラキラ

第37章 寵愛一身


「すみません……あれ?そそっかしいな、僕」


この場をどう切り抜けようかと、焦りながら頭をかいてると、その人は、クスクス笑いだした。


「自分、大丈夫か。めっちゃ汗かいてるで」


顔をあげると、冷たそうだと思ったその人は、柔和な笑みを浮かべていた。


「……えっと……」


ますます焦る。

親がいたら忘れ物を届けに……とは、思ってたけど、その先を考えてなかった。

無理だ。

松本に会うのはあきらめよう。


俺は、うつむいて、ぺこりと礼をした。



「あの……、僕、出直します」

「………もういいで。あいつ明日には行けるんちゃうかな」


松本の話が出て。
俺は顔をあげて、その言葉に飛びついた。


「あのっ……潤くん風邪かなにかですか」

「多分な」


さらっと、欲しい答えをもらった。


「もともと頭痛持ちやねんけどな、いつものやと思ってたら、熱まででてきたから休ませたんや」


……そうだったんだ。


大野が、あいつ頭痛持ちだって聞いたことあるって言ってた。
その通りだったんだ。

俺は、恋人であるのにも関わらず知らないことがあったことに、もう一度ショックをうけていた。

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