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キラキラ

第37章 寵愛一身


……誰だろ?

松本は一人っ子っていってたし。
お父さんにしたら声が若い。

一瞬、返事を言い淀んでいたら、


『どちらさん?』


その若い男の声に、不審そうな色が混じった。


ヤバイ


俺は、慌てて背筋を伸ばした。
インターホンごしに、きっとこちらの姿は見えてるはず。


「あの。二宮といいます。潤……くんお休みだったので、忘れ物を届けにきました」


用意していた台詞を喋ると、インターホンの声は、ますます訝しそうな声音になった。


『……おたく学校は?まだ終わってへんやろ?』


当然な反応だ。

…………ヤバイ。


「えっと……俺……僕も頭が痛くて早退してきたんです」

『…………』


ダメか。
こんな怪しい来訪者に扉なんか開けてくれるわけない。
この声の主が誰かは全く謎だけど、その人にとったら、俺も謎の人物だろう。


出直そうかな……


あきらめかけてると、その声は、ふーんと言った。
そして、


『……ちょっと待っとり』


という、一言ののち、インターホンがプチっと切れた。


出てきてくれるのだろうか。

俺はちょっとホッとして一歩後ろに下がった。

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