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キラキラ

第37章 寵愛一身


ペットボトルを二本抱えて、校舎裏に走る。
頭のなかをめぐるのは、先程かわした大野との会話だった。



…………具合が悪いって……?

『違うか?今朝見かけたとき、異常に顔色悪かったから』

…………顔色……?

『頭痛持ちだって聞いたことあるしな』



聞いたことない。
顔色も……わかんなかった。
寝てる顔が綺麗だな、なんて的はずれなこと思ってたくらいなのに。

俺は、自分をぶん殴りたい気持ちだった。
どうして、分かんなかったんだろ?
どうして、恋人の変化を、敵対するリーダーが分かって、俺が気がつかないの?

半分泣きそうになりながら、さっきまでいた場所に走り寄る。


「うわぁ、二宮。早かったね」


ゼイゼイ言ってる俺に、相葉が漫画から顔をあげて、声をかけてくれる。


………………!


でも、俺は驚きすぎて声が出なかった。
さっきまで確かにいた松本が……いない。


「あの……松本先輩は……」

「ああ、なんか電話かかってきたみたいでさ。用事ができたって、急いで帰っていったよ。」

二宮によろしくってさ。


「……そんな……」


相葉の言葉が遠い。

俺の顔見て帰るとかないの。
ほんの数分じゃん。
それすら待てない急用ってなに。

ぐるぐるとモヤモヤが渦巻く。


「二宮?」

「…これ、あげます」

「え、いいの?」


スポーツドリンクを相葉におしつけて、俺は必死で平静を装った。

手が震えて、紅茶のボトルのキャップはなかなかあかなかった。

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