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キラキラ

第37章 寵愛一身


「……こんにちは」


冷たいボトルを手にして、その場を譲る。


「……急がせちまったか?」


ふっと笑いながら、大野は、ポケットからジャラジャラと硬貨を出して、いち、にぃーと数えてる。


「いえ……」


と、愛想笑いしながら、これかぁ……、と手にしたものにがっかりしていた。

あまり、スポーツドリンクという気分じゃないんだよなぁ。
相葉にでもあげようかな。

この場から動かない俺に、大野は不思議そうにこちらを見るから、もう一本買うんです、とジェスチャーした。


「ああ……そっか、すまん」

言いながら大野が買ったのは、乳酸飲料。

そして彼はその場で蓋をあけて飲みだした。

……似合わなくて笑っちゃう。


二本目を買ってる俺に、大野は緩く聞いてくる。


「かわりないか」

「はい」

「変なやつとかに、からまれたりとか」

「……してません(笑)」


大野との出会いが、そんな現場を助けてもらっているせいで、なんだかこの人は、すごく俺を気にかけてくれている……ような気がする。


「そっか……良かったな」

「はい……」

「旦那は?」

「今は寝てました」


旦那って……

くすぐったく思っていたけど、次の大野の一言に、俺は目を見開いた。


「ああ……なんか具合悪そうだったもんな」

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