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キラキラ

第37章 寵愛一身

自販機の前で、ため息をつく。

松本を好きな気持ちは、自分のなかに確かにあったけれど、これほどまでに、自分の気持ちを持っていかれてると正直思わなかった。

俺には、潤がいるだろ……っていう、さっきの上田の指摘が大きい。

側にいたくて、笑いかけてほしくてたまらない。
つれなくされると寂しい。

松本の想いをようやく受け止めれたと思ったのに、あっさり俺がそれを越えてるなんて、笑い話だ。

無神経だと上田には怒られたけど、俺は、さっきのように菊地や櫻井と一緒にいても、松本がヤキモチを妬いてくれるのならば、それもいいかもな、なんて、ひどい考えまでうかんでしまう。

……どれもこれも、俺があいつに愛されてればの前提なのだが。


もしも飽きられているならば。
もしも心が離れかけているならば……


俺は身を引くことができるだろうか。
こんなに……好きになってんのに?

悶々と暗い思考に陥ってると、後ろから、


「……買わねぇの?」


と、ぽつりと声がした。


誰か並んでた?


「あ、ごめんなさい。今……わぁ」


あわてて、コインを投下し、紅茶が欲しかったのにボタンをおしたのはスポーツドリンク。

ガコンとでてきたボトルに、しまったと思いながら振り返ると、


「……よぉ。元気か」


ふにゃりと笑う、三年の不良のリーダーがそこに立っていた。

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