
キラキラ
第37章 寵愛一身
「……どこ行くんだよ」
咎めるような低い声で、俺の動きをとめたのは。
「上田先輩?」
菊池よりさらに派手な明るい金髪をしたその人であった。
仏頂面で、俺の腕をとり離さない。
「え……裏庭ですけど」
上田の不穏な雰囲気に戸惑う。
怒ってます、と顔にかいてある気がする。
いつも怒ってるような顔してるからわかんないけど。
いや。てゆーか!俺なにもしてないし!
「そっちじゃねーだろ」
「え……」
屋上へのこの道は、裏庭にも行ける。
ほんの少しばかり遠回りかもしれないが、数十メートルの違いだ。
でも、上田は俺の腕を離さない。
その様子を見てた菊池は、
「なんだよ。別に取って食いやしねーよ」
と、余裕綽々な顔で、鼻で笑った。
これは、まずいな……。と、俺はおとなしく上田の側に寄った。
眼光はいつも鋭い人なのだが、菊池とは犬猿の仲なのか、よりいっそう鋭い刃物のような瞳をしてる。
下手すりゃ、視線だけで刺し殺しそうなほど。
「……じゃあな。二宮」
おまえなんか相手にしないとばかりに、肩をすくめて、歩いて行く菊池に、上田は、大きな舌打ちをした。
