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キラキラ

第37章 寵愛一身


しばらくの後。

ほれ、と、パン二つとお釣りが、菊池の手から俺の両手にのった。


「あ……ありがとうございます」


……いいんだろーか?


なんだか、戸惑ってしまう。

だが、菊池は悪びれもせず、そいつに『サンキューな』とか言っちゃってるから、俺もあわてて頭をさげた。

そんな俺をみて、菊池がポケットに手をつっこみながら笑った。


「裏庭行くんだろ」

「はい」

「旦那が待ってるもんな」

「…………えと」


なんて答えりゃいいんだよ……


困りながら、歩きだした菊池に並んだ。


「菊池先輩は、屋上ですか」

「まあな」

「……大野先輩と櫻井先輩はお元気ですか」

「元気元気。……おまえもたまには、こっち来れば?おまえならあいつらも歓迎すると思うぜ?」


面白そうに無責任な提案をする菊池に、苦笑う。
分かってて、言ってるのだろうからタチが悪い。

……そんなことしたら、松本の機嫌が地を這うぞ。

俺は、肩をすくめて首をふった。



「いえ……やめときます」

「なんでよ。面白ぇじゃん」

「面白くもなんともありませんよ……」


そのとき、俺の肘が誰かの手によってひかれた。

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