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キラキラ

第37章 寵愛一身


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寝坊した母さんに、


「ごめん!今日はパンでも買ってちょうだい」


と、渡された1000円札を握りしめ、俺は購買部に来ていた。

予想はしていたが、売り場の前の、山のような人だかりに、俺はげんなりしてため息をついた。


……めんどくさ……


人が多くてガヤガヤしてるこの空間は、俺はあまり得意じゃない。
さらには、争奪戦のような取り合いも好きじゃない。

だけど、この人混みに入っていかないと、全て売り切れてしまうのは明らかだ。

学食にしようかと、後ろを振り返ったが、座るとこあるか……?というくらい、そこも混雑している。

ならば、昼くらい抜いてもいいか……、とも思ったが、何も持たずに裏庭には行きづらい。


……困ったなぁ……


藤井おすすめのBLTサンド、この間美味しかったから食べたかったけど……しょうがない。
トレーの中に腕をのばして、運良く手に触れたものを買うしかない。

俺は、意を決して、人混みに滑り込む。


……くそっ……


だが、一生懸命取りにいこうとするも、まわりは、俺の身長をゆうに越える大男ばかり。
もちろんリーチも違う。

それでもなんとか隙間をみつけて、前に行こうとした瞬間、新たに横から来た集団に押され、俺は弾き飛ばされた。

踏ん張ろうとした足がくねり、転びかける。


げ。


俺、めちゃダサいじゃん!!


コンクリートに転がるのを覚悟したとき、誰かに肩を抱かれた。

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