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キラキラ

第37章 寵愛一身




書店をでた。


「カズ、なんにする」

「……オレンジがいいです」


いつものように、自販機でジュースを買い、駅前の広場のベンチに腰を下ろす。


最近の学校帰りのデートコースのラストは、大体マクドに寄るか、駅前のベンチかの二択。

松本と二人でたわいもない話をして、のんびりとすごすこの時間が、俺は好きだった。

はたからみたら、仲のよい先輩後輩。
だけど……


さっきから押し寄せるグルグルした想いに、必死で蓋をする。


やめよう……考えない。


松本が、うーん、と伸びをして、俺を見た。


「テスト勉強してんの」

「あんまり……」

「カズの得意教科は?」

「数学……かな。どっちかといえば理系です」

「……ああ、俺もだ。英語はなんかのまじないに聞こえる」

「ふふっ……同感です」


松本の言葉に、ふと、今日の英語の授業を思い出した。
上田と二人でサボってたよね……確か。


「そういや、今日、体育の授業寝てませんでした?」

「……なんで知ってんの(笑)」

「見てました」

「気持ちいいんだ。あの木の下」


松本は楽しそうにコーラをあおった。


「……先生怒りませんか?」

「もうあきらめてるみてーだぜ」

「……なるほど」


堂々とあそこまでサボられては、いっそ、気持ちいいかもしれないな。

俺は松本のあっけらかんとした口調に、くすくす笑った。

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