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キラキラ

第37章 寵愛一身


「……こんなとこにいた。ったく探したぞ」


ホッとしたような響きに、俺は顔をあげた。


「あ……ごめんなさい。分かりやすいのないかなって探してたんで……」


手にしてた参考書を棚に戻しながら、考えてた言い訳を口にする。

松本は、雑誌を脇に挟みながら、俺の髪の毛をくしゃっと撫でた。


「急にいなくなると心配になる」

「……いなくなりませんよ(笑)」


笑った俺は、棚に戻した参考書の隣の一冊を、再び手に取った。
……買いもしないのに。


そっか……そういや中間テスト近いもんなぁ……、と松本は興味無さそうにあくびをした。


結局、すぐに普通の顔なんかできる自信がなかった俺は、書店の一番奥にある、学習参考書コーナーまで移動して、心を落ち着けていた。

なんでこんなに動揺してるのか自分でもわからない。


松本がモテるのは知ってた。
でも、実際にそれを目の当たりにしてしまうと、急激に胸が痛くなった。


あの女の子の真っ直ぐさに、俺は、太刀打ちできるような人間なのか。

松本の隣は、やはりあんな普通の女子高生の方がお似合いじゃないのか。

……松本の恋人の位置なんて、俺には不釣り合いじゃないのか。

考えれば考えるほど、ドツボにはまっていくのがとめられなかった。

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