
キラキラ
第36章 バースト10
やがて、斜めをむいていた車の頭が、ゆっくりと進行方向に、向いた。
俺は、思わず、ふぅ……と、ため息をつき、握りしめていた拳を緩めた。
眼下でドライバーたちが喜びあってるのがみえる。
当事者なのであろう若い夫婦が、周りにペコペコ礼をしてるのがみえる。
不自然でないように、しかも雪をかきわけながら車体を動かすのは、意外と骨だった。
「……さすが、翔」
潤が、微笑んだ。
俺は、キラキラした瞳の潤を見て、にやっと笑った。
「だろ?」
「うん」
「惚れ直したか?」
「…………ぅ」
とたんに言葉につまる潤。
「そこはそうだって言ってくれないと」
「……だって……」
つくづくからかい甲斐のあるやつだ。
俺は、笑って潤の手を握った。
「仕上げだ。ちょっとおまえのチカラも貸して」
「……なにすんの」
「道に積もった雪を減らす」
「どうやって?」
「路肩に寄せるんだよ。せーので集中しろよ。いいか?」
「わかった」
潤は、ちょっと緊張したように唇をなめて、目を閉じた。
長い睫毛がバサリと音をたてるようにふせられ、眉が少しひそめられる。
「いくぞ……せーの」
「……っ」
手のひらから伝わる潤のチカラも借りて、俺は残りの能力を開放した。
俺たちのからだから放たれたチカラは、ここから南北数キロ先の道路にはたらき、走行しやすい状態にすることができた。
