
キラキラ
第36章 バースト10
雪道の立ち往生は危ない。
車の流れがあるからこそ、あまり積もらない道路も、流れがひとたび止まってしまうと、路肩に積もった雪のように、道路にもどんどん雪が積もってゆく。
結果、冬タイヤをはいてても意味のないくらいの雪にみまわれて、みな動けなくなってゆくのだ。
完全に停止してしまった車。
前も後ろも車が連なる。
え……やばくね?
戸惑う俺たちを、安心させるように、松岡さんは、困ったな、と笑って頭をかいた。
そして、
「ちょっと前の方の様子見てくるわ」
と、ジャンパーのフードをかぶり、颯爽と車を降りていった。
俺は、すかさず智兄に声をかける。
「ねぇ」
「ん……ちょい待て」
既に智兄は目を閉じ、意識を飛ばしてた。
なにも知らない松岡さんの前ではチカラはあまり使いたくない。
今がチャンスだった。
智兄が千里眼のチカラを行使しはじめた。
この立ち往生の先頭の原因はなんなのか。
どれくらい連なっているのか。
早くしないと、俺たち含め、この車列のすべての人々が危ない。
「先頭はあまり……遠くないな。一キロくらい先の……ああ家族連れの車が、動けなくなってる」
目を閉じたままの智兄が呟く。
「道路ふさぐようにスリップしたのかな。対向車も通るに通れねぇみたいだ。こりゃ最悪だな……」
「俺、行くわ」
ジャンパーを着込む。
念動力を使えば、車を動かすことなんてわけない。
ただ、あまり移動に時間をかけたくない。
「潤。跳べるか」
できれば松岡さんが帰ってくるまえに、かたをつけたい。
潤は真剣な顔で、頷いた。
