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キラキラ

第36章 バースト10


……実は、智兄はあまり運転が上手ではない。


家の周りのショッピングセンターとの往復や、たまの外出でも感じることだが、下手なくせにスピードを出す、厄介なドライバーの典型だ。
俺が一緒のときは、時々バレない程度にチカラで調整してやってるんだけど。


「……?智、もうちょっと速度落とさねぇ?」

「え……そお……?」


不思議そうに、智兄がメーターを見た。


「120……ちょっと出すぎかな?」

「ちょ……ちょっとな」



松岡さんは、助手席で顔がひきつってる。

俺やかずは、もう慣れてることなのだが、普段あまり智兄の運転する車に乗らない人には、意外なのだろう。
もっとも、潤や相葉くんは、なんだか分かってないからか、ニコニコして楽しんでる。


「次のサービスエリアで、俺、またかわるわ」

「え、もう?」

「暇だからよ。こうしてんのが」


松岡さんは、早々とドライバー交代を約束した。
俺は、おかしくてたまらなかったが、ポーカーフェイスを貫いた。

山道を縫うように走る高速道路。
両側の木々は数日前からの冷え込みで雪化粧をしてる。


「……寒くないか」


足元が冷えてきてる気がして、寒がりの潤を思いやれば、


「全然」


後ろの席の二人も手を繋いでることに気づいてからは、恥ずかしさもなくなったようで。

潤は俺の手をぎゅっと握った。


「そっか」

「うん……あ」


窓越しに空を見上げてた潤が声をあげた。


「……降ってきた」


キラキラと舞い散る雪が、高速道路を包み始めた。

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